大量の精液を浴びて、どろどろに汚れた三橋を一瞥し、溜息をつく。
生臭い匂いに吐き気が込み上げてきた。自分の眉のあたりがぴくりと動くのを感じる。
「よーす、畠。叶は?」「帰ったよ」異様な光景と見合わない、普通の会話に頭が痛む。
「…お前ら、こんなにしちゃってどうすんだよ。仮にもこいつ、理事長の孫だぜ。誰かに見られたらやべーだろ」
ぽつりと呟くと、「平気だよ、こうすれば」誰かの声と共に、汲んであったバケツの水がバシャっと三橋のぶちまけられた。
「うぇっ…、けふっ」
頭から水を浴びせられた三橋は、小さく咽る。這いつくばったまま、けほけほと苦しそうに咳をした。
その姿がどうにも惨めで弱々しく、殊更苛付いた。
「腹減った。そろそろ帰ろうぜ」
誰かがそう口走ると、たった今まで起きていたことなんてまるでなかったかのように、部員達の興味は別のことに移っていく。
三橋はもうすっかり空気だ。三橋自身もそれに気づいて、ようやく解放された体を動かしだす。
水溜りの中でびしょ濡れの体を、犬みたいにぶるっと震わせた。四つん這いの三橋を見下ろす俺の足に、ぴしゃりと水が跳ねる。
靴下の先に、ほんの数滴染み込んだ水。幾人もの精液と混じり合った、汚れた水。
その瞬間、俺の頭にかっと血が上る。
「汚ぇな!」
みんなが俺の大声にぎょっとして振り返った時には、三橋はロッカーに向かって吹っ飛んでいた。
「お、おい畠、どうした?」
ガタン、と派手な音と共にロッカーに叩き付けられた三橋は、そのままずるずると床に倒れ込む。
水浸しの床に、じわじわと赤い色が広がった。
俺の蹴り上げた足が三橋の顔面に当たり、吹っ飛んだ三橋が鼻血を出して倒れていたのだ。
「なあ、おい、血が…」
背後から聞こえる声が誰のものかもわからないほど、俺は感情的になっていた。
「…お前らもう帰れよ。あとは俺がやっから」
「だって畠」
「いいから帰れよ!…こいつを起こして口止めしたら俺も帰るからよ」
みたいな話を待ってます。