「……そうか。了解した。報告ご苦労さん」
無線連絡を終えたビリーが俺を振り返る。
「”狐は尾を巻いた”……状況は終了したそうだ。今からでも降りられるぜ。どうする?」
考えるまでもない。俺は一つ頷くと、シートに凭れて目を閉じる。
「お達しが出たぜ。中村、降下だ」
パイロット席の中村が頷き、鮮やかな操縦でへりは降下を開始する。
俺は薄目を開けて、隣を見る。
そこには年代物と思しきジャパンの壺が、置かれている。
この壺があればいかなるときでも、
そう、つい半日前まで世界を襲っていた「規制」の中でも、
三橋に会えると、そう聞かされたからこそ、
俺は多忙の中、万難を排してこれを入手したのだ。
調度品にでもするか。
壺に手を伸ばし、表面を撫で回す。
このように三橋に触れる日が来るだろうかと思いながら、
俺は眼下に迫るトーキョーの風景をぼんやりと眺めていた。