阿部「三橋!丸裸にすんぞ!」

このエントリーをはてなブックマークに追加
688fusianasan
「……そうか。了解した。報告ご苦労さん」
 無線連絡を終えたビリーが俺を振り返る。
「”狐は尾を巻いた”……状況は終了したそうだ。今からでも降りられるぜ。どうする?」
 考えるまでもない。俺は一つ頷くと、シートに凭れて目を閉じる。
「お達しが出たぜ。中村、降下だ」
 パイロット席の中村が頷き、鮮やかな操縦でへりは降下を開始する。

 俺は薄目を開けて、隣を見る。
 そこには年代物と思しきジャパンの壺が、置かれている。

 この壺があればいかなるときでも、
 そう、つい半日前まで世界を襲っていた「規制」の中でも、
 三橋に会えると、そう聞かされたからこそ、
 俺は多忙の中、万難を排してこれを入手したのだ。

 調度品にでもするか。
 壺に手を伸ばし、表面を撫で回す。
 このように三橋に触れる日が来るだろうかと思いながら、
 俺は眼下に迫るトーキョーの風景をぼんやりと眺めていた。