阿倍「三橋、いいとこついてるか?」

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201fusianasan
「あ、阿部 君っ」
「なんだよ、まだ着かないぞ」
「おもっ おっ お、おお お、もっ」
「おもらし?」
「ち、ちが う……」
「じゃあ何だよ」

チャリをこぎながら、オレは肩に担いだ三橋を抱えなおした。
風に煽られないようしっかりとシーツで包んだ。毛布とか重いモンだとその重さで衣が剥がれるんだよな。
あったかいほうがいいかと思って試したときゃあ血の気が引いたぜ。
儀式前にオレがトドメさしてちゃ世話ねーもんな。
シーツでぐるぐる巻きになった三橋を自転車の荷台にくくりつけるなんてことはできなくて、
オレは不安定な自転車をいつもよりゆっくりこぎながら学校へ向かっていた。

「お、おお お」
「はあぁ!? だーもうっ、いいから黙ってろ!」
「う、ううっ……」

右手だけで舵を取りながら、オレは思いっきりペダルをこいだ。
こうやってエビフライを担いで移動するのも今日が最後かもしれない。
そうなることを願いながら朝の冷たい空気に白くなった息をはきだした。
三橋の体はもう生ぬるくなっていた。