※前回分で回想終了 次回投下分で終了予定
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1197183519/119 窓の向こう、夕暮れの空へやがて群青の帳が落ちようとしている。それはここも同じで、夜が影を飲み込み部屋を闇へ染めていく。
博士は「暗いな」と呟いて、懐からライターを取り出し、テーブルの上にある蜀台へ火を灯した。
薄暗い部屋に幻想的な柔らかい明かり。それだけであったが、先ほどまでの空気がガラリと変わった気がする。
「間違い1つは廉を救ってやれなかった事だ。アイツのだした微かなサインに気づいていればきっと違うはずだった。」
後悔と自責。橙色に照らされる博士の瞳はその一色であった。
「それではもう1つは…」
「no.384の存在自体だ」
詳細は知らなくとも悲惨な過去を経験した事までは知っていたが、この言葉までは予測できていなかった。
しかしあの日記の内容を思い出しても見れば、よくよく考えれば納得させられるものがある。
外見は本物と見紛う程といえども決定的に違う存在。愛おしい者の生き写しであるあの人形への感情、その葛藤。
傍観者の想像以上にそれは複雑だろう。男は興味深く目をギラギラ光らせて、「どういう意味で?」と博士に話の先を促す。
「可哀想な事をしたと思っている。世界的功績は残そうとも、結局オレの慰み物でしかない存在にしてしまい、
果てには民衆から追われ……その挙句この様だ。」
微かなため息が彼を囲う籠のような部屋の中に響く。
「貴方は本当に酷いお人です。自らのエゴを無知な人形に押し付けておいて、今更許しを請う」
「そうだな、オレは酷い」博士は自嘲の笑みを浮かべつつソファに深く座りなおし、窓の向こうへ目を向けた。
そこからでは海も見えない、ただの群青に染まりつつある寂しい空しかない。
「そしてno.384を使って過去を…未来を修正しようとしている」
「あまりにも自分勝手ですね」
「そうだな」
「しかし、未来は変わっていない。」
「…どうしてだろうな。何一つ変わらない。」
目尻が垂れた目が鋭い眼光を宿して未だ整った姿勢を保ち続け傍に佇む男へ向けられる。
「…知っているんだろう?どうして8ヶ月たった今もここに何の影響がないのか…」
その問いに男の薄い唇が笑みの形に成されたのは、蝋燭の火が作りだした幻覚だろうか?
ただ、真実はそこにあることは間違いなかった