田島君考える
携帯の画面はメールの着信が1件。三橋からだった。中村先輩送ってかなきゃなんねーし、返事は後でいいかな。
「メール?」
「うん、後でいーや」
内容確認しないまんまフリップ閉じたら、中村先輩がじーちゃんやおかーさんにお邪魔しました、なんて澄ました顔で挨拶してるから思わず噴出した。
「なに笑ってるの」
「いや、なんでもないっす。おかーさん、ちょっと送ってくっから!」
「はいはい」
自転車出して家の門をくぐったら三橋がいた。
オレに気がついて一歩踏み出して、その後ろに中村先輩がいるのに気がついたのかそのまま動かなくなる。
「あれ?あの子野球部の子だよね?」
「うん、ピッチャーやってる三橋」
「田島くんに用かな?じゃあ送ってくれないでいいよ」
「え、でも」
「近いし、まだそんな遅くないし平気だよ、ありがと」
じゃあ自転車貸すって言おうとしたけど、中村先輩はそれよか早くじゃあねって言って手を振った。
先に歩き出した先輩の後追っかけて後ろから手首を掴むと、びっくりした顔して振り返った先輩にキスした。
三橋がこっちを見てるのはわかってる。分かってるからこその行動だった。
「強引な男は結構好きかな」
中村先輩がびっくりしてたのなんかほんの一瞬だった。すぐに目が笑ってそんなコトを言う。
「私はいいから三橋くんトコ行ってあげなよ」
オレの肩を両手で掴んでくるって体を反転させると、ぽんと背中を叩いた。
耳のすぐ後ろでまたしよーねって小さい声で言って、中村先輩はオレと三橋に手を振って帰って行った。
クソゲが終わるまでお休みを頂きたく。