>>620 「手は出すなよ。床上手だからって」
「だしませんよ」
「そういえば、奥さんって家事も料理も出来るのにどうして実家暮らしなんですか?」
2人暮らしならやりたい放題だろうに。
「あぁ…最初は2人暮らししてたぞ。でもアイツの料理がクソまずくてな、オレ死にそうだったから実家に避難したんだ。」
先輩の答えに正直おどろいた。廉さんの料理は絶品とまでは行かないが、
平々凡々な味だったから、そこから死を見るほどのものなど想像できない。
しかしこのある意味神経質そうな男であろうから、実際ちょっと微妙なだけではないのか
「同棲とかはなかったからまずかったのかもしれない、結婚して実家に戻るまでの3ヶ月間オレは地獄を見た。」
以下、先輩の話は長いので要約させてもらう。
当初よく近所の迷惑顧みず先輩は裸でギター掻き鳴らし奥さん(裸エプロン)を酔わせて、
ベッド上での調理をしていたらしい。(このイミフな段階で俺はフェードアウトしたかった)
しかし実際の料理は2人とも悲惨なものであり、ウズラのタマゴ爆破事件をはじめ、
カレーの具皮付き事件、謎の野菜発火事件(小火騒ぎにまで発展)などがあったらしい。
ついには化学兵器に近いものを作り出し、大事件を起しそうになった事もあるとか。…さすがに化学兵器はねぇよwwwww
家事も掃除をすれば物を落として破壊、あと奥さんに非がないとはいえ下着が盗まれるは、
干している布団に猫の臭い付けされるわで大変だったそうだ
さすがにやばいと実家に逃げ込み、奥さんをお母さんの下で料理と家事が出来るよう教育してもらったらしい。
とんだ迷惑夫婦だ。聞いた後俺は得体の知れぬ疲労感に襲われた。
多分彼らにかき乱された周りの人間の苦労が見て取れた所為もあろう。(俺もそのうちの一人だし)
「かわいそうですね…」
「だろ?オレも大変だったんだからな…家帰って即効セックスしようと思ったら、家が爆心地みたいになっててさ…」
「いや、そうじゃないですよ…」
愚痴をこぼしながら残りのハヤシライスを掻き込む阿部先輩は何?という目でオレを見たが、
なんでもないですと茶を濁すようにオレも残りのオムライスを勢い良く口へ運んだ。
「でざ、最近アイツも家事になれて料理も食えるモンになったし、そろそろ家を出ようとおもうんだ」
不意を付く問題発言に俺は咽そうになった。彼らの犠牲者が新たに生まれそうな予感である。
おわり