「オレ もう、約束なくても 大丈夫だ。だから、田島 君」
三橋の声だけが聞こえる。
学校内だってことを忘れてしまいそうなほど静かだ。
ブラスバンドの音も、放課後の騒ぎ声も聞こえない。
もっともっとうるさくたってよかった。
三橋の声が聞きたくない。
約束がなくても大丈夫なのは、三橋だけだ。
約束をして縋っていたのは、田島の方だった。
守っているつもりで助けを求めていたのは田島だった。
止めたい。言葉を遮って、無理やりにでも違う話をしたい。
けれど、それは出来ない。
それだけは出来ない。
三橋の邪魔をするものは、たとえ自分自身でも許せない。
三橋が言いたいなら、それを止めることは出来ない。
散々三橋を騙した罰が、報いが今きてしまったのかもしれない。
「オレ、もう 約束なくても 平気。だから、田島君も オレんこと守る、約束 いいよ」
ナシで いい。ずっと ずっと ごめんね。
俯いたまま言う声は少しだけ震えていた。
頭がぐらぐら揺れるほど重く感じた。どういうことか、理解が追いつかない。
ただ、三橋が勘違いしていることだけは分かった。
何を否定されてもそれだけは言わなければならないと思い、必死に口を開く。
「約束なんかなくたって、オレはお前のこと守るよ」
あの約束は、三橋に自分を信じてもらいたかった田島が押し付けたものだ。
それを三橋が受け入れてくれたことが嬉しかった。
守るなんて、田島が勝手にしていたことだ。
約束する前からずっと見守っていたし、守ろうとしていた。