>>877 書けたらまた後でくるかもしれない
「なーんかカップルばかりでウェッてなるんですけど、キリストの誕生日祝う気すらねぇ癖にクリスマスってか」
「悪態ついてねぇでホール戻れよ。チーフ呼んでたぞ」
ゴミを出しにいった店の裏。
軽く休憩を取っていたバイト仲間はヘイヘイと軽い返事をし、吸っていたタバコを地面へ落として靴で火を消した。
街が人でごった返すクリスマスイブの今日、オレのバイト先であるレストランも例外でなく客が大入りし目が回るほどに忙しい。
帰るのは片付けが終わってからだから余裕で日付を跨いでしまいそうだ。
「阿部はバイトのあと同棲してる彼女と過ごすんだろ?いいなぁー俺も混ぜて」
「残念。ケーキは2人分しかない」
それに彼女じゃない、男だ。さすがにそれを口に出しはしなかったが。
もうそろそろ、ケーキを取りに行っている時間だろうか?
もともと悪天候ゆえに灰色だった空はさらに暗くなり、空から地へ舞う白い雪を映えさせている。
ここ数日の大雪で交通の便に支障をきたしていても、やはりホワイトクリスマスではいいものだ。
東京に越してからの初めてのクリスマスに女ではないが些か胸が踊っているのも事実。
クリスマスプレゼントは休憩中に取りに行こうと計画を立てているとき、ポケットにつっ込んでおいた携帯が震える。
「彼女っすか?」
興味深々に目を輝かせて携帯を覗こうとする仲間を押し退け、携帯を開く。
ディスプレイには【三橋家】の文字。三橋の実家からだなんて珍しい…
そういえば夏休み以来会ってないな。廉そっくりのおばさんとおじさんの顔を浮かべながらオレは通話ボタンを押した。
「…はい、阿部です」
『あ、阿部くんかい?実は…』
電波を通じて聞こえるのはいつもと違うおじさんの声だ。随分トーンダウンしている。
「どうかしました…?」
『いま、警察から電話あってね…廉が…』
近くを通過した電車によっておじさんの声は微かにかき消されたが、何とか聞こえたその言葉。
「わるい!バイト早退する!」
オレはエプロンを脱いで男に押し付けると、一目散に駐輪所に向かった。
うそだろ?朝バイトにむかうオレを見送ってくれた。相変わらず微妙な卵焼き食わされた。
遅くなってしまうけど今夜一緒にケーキを食べようって約束したのに
廉が死んだなんてうそだろ?
朝までいつもどおりだったじゃやないか