じゃあ、めちゃくちゃ書き途中で投げるとくわ
図画工作に血道を上ながらも飯を食らい終え、理科実験室に戻ってみると、こっちもこっちで閑散としていた。
昼飯時を過ぎたため、すでに後片付けをすませ解散してしまった机もいくつかある。
栄口は隣のメイド喫茶グループ(しかし調理班なので普通の服装)となごやかにお茶を酌み交わし、
三橋と米谷は隣り合って座り、ひとつのイヤホンのRとLを分け合っていた。
三橋は何故か三毛猫耳ヘアバンドを頭に装着している。髪でバンド部分がいい具合に覆い隠され天然ものっぽく見えている。
なんだこの孫悟空とはなんの関係性もない大成功なコスプレ。
何聴いてんだよ、と近づいていくうちに段々と自分の顔が青ざめていくのが分かった。おおおおおおおおお、おれのiPod nano(2gen/8G)に勝手に触れてんじゃ、Neeeeeeeee!!!
「あ、沖、おかえりー。あっちどうよ、客来てた〜?」
ヘラヘラと笑う二人のどちらの頬から拳を打ち込んでやろうかと一瞬だけ考えないでもなかったが、
極めて平常な顔を保ちつつおれは答えた。
「いや、空いてたよ」
そっかー、と米谷は白いカナル型イヤホンを耳からズッポンと引き抜いた。
「沖君、これ なんて曲?」
だから画面見れば書いてあるって教えただろ〜?米谷がヘラヘラとレクチャーするが、
え、でも、画面 表示、ナイ、と三橋は戸惑うばかり。
だって○ッ○○○したのにはジャンルしか登録してねーもん。ああ、アートワークもはめとかなくて良かった……。
胸をなで下ろしつつ、「面倒くさいから曲のデータしてないんだよ」と三橋の手からnanoを取り上げた。
う、お、と宙に浮いたnanoにじゃれつくような仕草をする三橋の額に黒い鉄板の角がぶつかる。
「い、イタイ……」
「三橋、へーきかぁ〜?直撃しちゃったよー」
水谷がギャッハッハと笑っているうちに手元からイヤホンのコードを奪い取り、一束にまとめる。
「今の、カワイイ曲だった。誰の?」
「えー?」
「女の子のヴォーカルで日本語だったよ」
心当たりがありすぎてわからん。
「昨日、沖くんが鼻歌してたヤツ、だと思う」
あれか。カミーユがせっくすせっくすせっくす言ってるmp3なぞを聴かれるよりかはずっとマシだが、ああ、ロック掛けておけばよかった、おれのバカ!
「えーと、確かアニメか何かの曲だと思う。おれも人からもらったから、よく知らないんだけど」
意味もなくシラを切ってみる。
ふーん、確かにアニメっぽかったなぁ、と水谷は鰹節のパックをもみほぐし始める。