阿部「三橋!お前のザーメンでフルーチェ作らせてくれ」

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846fusianasan
>>836

「阿部君、オレが球を投げ終えると、そのたびに声をかけてくれる ね。今のはいい球だっ、とか、ほめてくれるし」
なんだ、そんなことか。
「別に。キャッチャーだから投手が調子良かったら、声くらいかけるだろ」
「でもオレ、あんな風に言われたこと、ないから」
オレは横目で三橋を見た。伏せた視線に、やや陰がおちる。
「それに、サインも。あんな風にサイン教えてもらったり、いろいろ配球とか、考えてもらうとか」
「そんなのキャッチャーだったら当たり前だろ。いちいちそんなことで喜ぶなよ」
たまらなくなって、つい口調が荒くなる。驚いた三橋にびっくりしたように見られて、しまったと思った。
だけど三橋は小さな、だがはっきりとした声で言った。
「阿部君は、優しい な」
「え…」
いきなり何を言い出すんだ、コイツは。あぜんとして、オレは声も出ない。でも三橋は、そんなオレの目をまっすぐに見て言った。
「あんなにオレの為に親身になってくれてるのに、それが当たり前だなんて。阿部君は、優しいよ」
優しい? 優しいって、オレが?
「オレ、今までずっと一人で、誰にも頼るとかできなくて、それも全部、オレが悪いんだけど。でも、今日、阿部君に投げて、すごく安心して投げられて」
こんなに一生懸命喋る三橋を見るのは初めてだった。
もしかして、三橋がオレにここまで心の内を明かしてくれたのは、これが初めてじゃないだろうか。
「オレ、阿部君と野球ができて、本当に よかった」
心から嬉しそうにそう話す三橋から、オレは目をそらした。
違うんだ、三橋。
三星時代に戻っちまってるお前はそう思うのかも知れないけれど、本当のお前は違う。
いつもオレに怯えていて、オレの顔色を窺ってばかりで。
オレもお前の気持ちなんか、ちっともわかってやれないし。オレは全然、いいキャッチャーなんかじゃないんだ。
心からの笑顔を向ける三橋に、オレはいたたまれなくなった。



明日は月曜か…おやすみはし。