三橋「高速ドーナツスピン!」

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781キモピ・キモエピ
前回あらすじ、三橋ロッカーに監禁放置まで。終結までノンストップで阿部のターン注意

阿部視点。

風呂からでて部屋でまどろんでいると枕元に置いていたケータイが震えた。生き物のように動くケータイにオレは何とも言えない嫌な気持ちになる。出る気分になれず手を出さないでいたら一度切れた後、また震え弾みで床に落ちる。
存在を自己主張するように床を転げまわるケータイにオレは溜め息をつき手を伸ばした。ディスプレイに花井の文字が浮かんでいる。用件が予測できた。

「はい」
「花井だけど今大丈夫か」
「ん、なに」
「さっき監督から電話あったんだけど、三橋がさ」
「三橋?」
「まだ家戻ってないって。確か、最後一緒だったのお前だよな」
切迫した花井の声が頭に響く。苛々する。

「まじで。一緒に帰ったけど、もうとっくに着いてるはずだ」
淀みなく嘘がでる自分に吐き気がした。
「阿部も知らねぇのか…」
受話器ごしに落胆する花井の気配が感じ取れた。
「わかった。んじゃ遅くにごめんな」
「他の奴には知らせたのか」
「これから。でもうちの親から親連中にまわってるかもしんね」
「そうか。オレちょっと外回ってみるわ」
「気をつけてな。オレも後で行く」
「ん」
通話終了ボタンを押そうとしたところを、花井の声で阻止される。
「阿部」
「なに」
「落ち着いててえらいな、もっとパニクるかと思った」
「でもねぇよ」
「わりぃ、だよな。…んじゃ、後で」
「おう」