アフタ最新号「俺に触れると黒くなるぜ」

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462すずめみはし

「ゴ メンナサイ…」
お姉さん座りで俯いたみはしは、今にも消え入りそうな声で謝った。
「まぁ良いや、次から気ィつけろよ。」
阿部にスプーンを手渡され、みはしは素直に受け取ったものの、用途が分からず
曲面に映る自分の顔を物珍しげに覗いている。
「まだ食えんだろ?」
お盆を人さし指でトントンと叩いて、俯いているみはしの注意をテーブルに向けた。
いつも遅くまで晩酌をしている父が早々と食卓を離れてくれたおかげで、茶碗に盛った
ご飯と ひじきの煮付けを難無く持って来れたのだ。
「この ご飯、形違うけど、今日みんなで食べてた、ね。」
みはしは見るなり目を釘付けにして、米粒をスプーンですくう。
(皆…? ああ、夕方部活で食ってた おにぎりの事か。)
小さい体の割に案外食い意地がはっている。
「ハハ、よく見てんな。」
と笑ったら、みはしも奇妙な三日月目で照れ隠しに笑って顔を赤くした。

気が抜けたのか、グ−で握ったスプーンから、粘着して すくいきれなかった米粒の塊が
ボトリとみはしの股に落ちる。
「ったく何やって…オイ、こぼれてるって!」
注意するそばから口に運んだひじきをポロポロ落とす有様に、せっかく食べ易いようにと
スプーンを持って来たのに無駄な配慮だった、と脱力してしまう。


「…べくん、おいし…ウヒッ、んぐ、」
「あぁもう… 黙って食え。ゆっくり食え。」

結局、テーブルの向いに座った阿部がスプーンですくっては、みはしへ食べさせるという
まるで餌付けでもしているような形になってしまった。
「今日だけだかんな。」
乱暴に聞こえる言葉と雑な世話の焼き方ではあるが、何だかんだで2人の相性は
そう悪くはないのかも知れない。