※おやすみはし
シャツに皺が残るくらいギュウギュウにしがみつかれたが、これでは歩けないので
とりあえず みはしを引っ剥がす。めげずに阿部の背後にまわったものの、腕にピッタリ
張り付かれて歩く状況に、新たな疑問が浮かぶ。
「なあ、今まで人間の姿の時はどうしてたんだ?」
飼い主というか保護者がいないと生きていけないのは見てとれる。
そんな(仮)保護者の心配を他所に、みはしは180度近く首を左右に振り
「阿部くんち、で 初めてなった。」
と、嬉しそうにフヒッと頬を染めて笑った。何がそんなに嬉しいのやら。
そういえば家に初めて来た日。
「‥‥あん時!」
みはしは闇雲に飛び回って窓に頭から強打していた。
(あー… あれが原因か…)
やっと合点がいった。
どこからどこまで忘れたのかは定かではないが“記憶喪失”というヤツだ。