チームメイト(巣山と三橋)
仰向けに倒れた三橋に被さるみたいにして何度も唇を合わせる。時々ん、だとか聞こえる息がすごくいやらしく聞こえるのは俺が興奮してるせいなんだろうか。
どんな顔をしているのか見たくなって目を開けるけど、近すぎてあまりよく分からなかった。ただ睫毛が頼りなさげに震えているのが見える。
「っは、あ」
明瞭な声が漏れたと思ったら三橋の眉間に皺が寄って、俺から逃げるみたいに首を捻った。その表情と仕草にギクリとする。
「悪い…」
「ちがくて、息、苦しいから」
思わず謝ると、三橋はふうと息を吐き出して独り言みたいにつぶやく。
「きっ、キスするのは、結構むずかしい…」
苦しくないようにするのはどうしたらいいのかな、なんて神妙な顔をするからなんだか調子が狂いそうだった。
こういう事っていうのはもっと隠微な空気とかになるもんなんじゃないのか。これじゃあガキのやってるお医者さんごっこの方がいくらか色気がありそうだ。
三橋の頭の横に両手を付いてそんな事を思っていると、いきなり頭を掴まれる。
「こ、今度は俺が、巣山君の口に、舌、入れていい?」
「いいけど…」
なんだかなんにも分かってない子供にイタズラしてるような気分になってくる。こいつ、好奇心だけでこんな事してるんじゃないだろうな。
三橋が俺の顔を引き寄せて、少し顎を上げた。唾液で濡れた唇が触れて、あったかくてぬめった三橋の舌が俺の口の中に入ってくる。
さっき俺がしたことをなぞるみたいに唇を舐めてから、舌に触れた。キスしてるだけなのに首の後ろがぞわぞわする。鳥肌が立つ寸前みたいな奇妙な感覚。
粘膜ってのはなんでこんなにいやらしいんだろう。顔の真ん中に唯一露出した粘膜があるっていうのは、考えてみたらものすごい恥ずかしいことなんじゃないのか。
どうしたらいいか分からなくて三橋のやりたいようにさせてみたけれど、それだけじゃ物足りなくなってくる。
三橋が俺のやった事をなぞるなら、俺だって同じ事をしてやろう。少し口を開いて密着させて、三橋の舌を軽く噛んで吸ってやった。
「ん…ぅ、」
首に回された三橋の手に少し力がこもった。キスしたまんま、三橋の薄い胸をシャツの上から撫でてみる。当然そこには膨らみなんてものはない。
胸を愛撫する事に意味があるのかは分からなかったけれど、俺には男女の手順を踏む事しかできなかった。
今日はこれだけ。すまん。