「あっちむいてホイ」
三橋は俺の指差すほうを向く。なんでワンテンポずれてそうなるんだよ、バカじゃないの。
恥ずかしそうに困る顔を見ながら俺は言う。
「はいワンペナ。罰ゲームな。これ塗らせて」
そう言いながら妹からパチッてきた口紅を取り出す。オレンジがかった明るい赤色の。
「う、うぅう」
ハイともイヤとも言えないまま、俺にあごを取られてされるがままになってる。
本当にアホだ。怒ればいいのに。
適当に唇の上をなぞって着色した。ちょっと驚く。唇に色がつくだけで顔がハッキリしてる。
うざさやキモさは相変わらずだけど、化粧のマジックは確認できた。
「んじゃ、もっかい。じゃんけんホイ、あっちむいてホイ」
また。こいつわざとか。俺の指先目で追ってんのか。頭悪いんじゃないのマジで。
次は何をされるのか怖々俺をうかがってる。なんだよそのびくついた目つき。むかつく。
「ツーペナ。つかお前、あっちむいてホイのルール理解してんの?」
大袈裟に肩を揺らせて縮こまる三橋。なんだよこいつマジうぜえ。
「知って、る よッ。でも、その、えと・・・」
言い訳考えてから口開けよ。いらつく。ていうか、口紅のせいか普段より三割り増しでうざく感じる。
「まあいいよ。んじゃ質問に答えて。コレ、何に使うか分かる?」
ズボンの尻ポケットからビニール包装された正方形のあれを出す。今度こそ真っ赤になった三橋。
今の俺の顔は多分意地悪い相をしてる。いやらしいのほうがあってるかもしれない。
三橋の目がきょろきょろ泳いでる。口がぱくぱくしている。そこまで照れることないだろ。
「知ってんだろ。言えよ」
突き放すようにひと言。三橋の動きが止まる。下向いたまま耳まで赤くして「コンドームです」と呟いた。
なんなんだよ、なんでそんな初心な女学生みたいな反応なんだよ。煽ってんのか畜生。
とことんまで困らせてやろう。そう思って俺は続けた。ちんこも頭もたげて同意してる。
「おら、もっかいいくぞ。じゃんけんホイ、あっちむいてホイ、じゃんけんホイ・・・」
俺が三橋の指にひっかかるはずもなく、当たり前のように三度目の負け。潤んだ目が俺を見てる。
「最後は選ばせてやる。ゴム試着してオナニーか、尻の穴で使い心地試すか」
マンガのように首を横に振りまくり、しまいには涙流しだした。冗談言うなとか笑い飛ばすとかできねえのかよ。
逃げないなら逃げないでいいよ、もっとビビらせてやる。萎縮してる三橋の左肩に手をかけ、ゴムの袋を歯で破った。
番組の途中ですが、一部地域の皆様とはここでお別れです