阿部「三橋!アテンションプリーズ!」

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223CRAZY FOR YOU
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あれから一週間が経とうとしていた。
何事もなかったかのように送る日々の中で、三橋はいつものように笑っていた。
俺は全てが夢だったかのように錯覚し始めていた。
あるいは、錯覚したと思いこむことで現実から目を背けていたのかもしれない。
だけど、それでもいいと思っていた。
逃げた先に幸せがあるのなら、逃げることは別に悪いことじゃない。
ただアイツが笑っていられるのなら、それでいいと俺は思っていた。

「おーい、阿部ー」
部活に向かう途中の廊下で、俺は花井に呼び止められた。
「なんだ?」
「俺さ、視聴覚室にノート忘れてきちゃってさ。でも今用があって取りに行けねェんだ。
 悪いんだけど、代わりに取りにいってくれないか?」
「ノート?花井にしちゃ珍しいな」
「いや、ちょっと…な。いいか、中は絶対見るなよ!」
「見ねェよ。田島じゃあるまいし」
「じゃあ頼んだぞ!あとで部室で貰うから」
そう言って走っていく花井を見送り、俺はやれやれと溜息をついた。
(ノートなんか明日でもよさそうなもんなのに…)
かといって、引き受けたからには無視するわけにはいかない。
俺は面倒くさいと思いながらも、視聴覚室に向かった。