三橋「た、田島君 何で俺のほっぺ囓ったりするの?」

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43fusianasan
*一部地域
*前スレ371よりネタ拝借



二人で帰ろうと言い出したのはどちらからだったか。
手をつなぐのが自然な動作になっていったのはいつからだったか。
そもそも男同士で付き合うなんて、どっちから言い出したのか。
そんなに前のことじゃないのに忘れてしまっている。
たった一ヶ月くらい前の話なのに、あいまいになっていく記憶は三橋の所ばかりが鮮明にうかぶ。

あれは確か二人で試験勉強をしている時だった。
俺の部屋で夕方の静かな時間が過ぎて、ふと目が合った瞬間奇妙な空気になった。
近い距離、前髪がぶつかりそうになっていた。
あべくん、と三橋は小さな声で囁いて、フヒッと笑った。

魔が差したとしか言いようがない。
そりゃ彼女はいないし、そういうことに興味があってもしてみる相手はいないし、だからって男にしたらそれはおかしい話で、俺はホモだと後ろ指を指されるわけで。
色素が薄くてやわらかそうな目の前にある唇に自分のを押し付けて、俺はようやく現実を見た。

三橋にキスをしてしまった。
思ったとおり、そこはやわらかくふにゃんと潰れる。そして少ししめっている。単純に気持ちいいと思ってしまった。
どうしよう、どうしたらいいんだ。
冗談だと離れればいい。
わかっているのに、離せなかった。
それから俺たちは付き合いだしたんだ。
恋愛と言うには、甘ったるさのないものだったけど、俺にはそれで十分だった。
飯時にそんなことを思い出してにやけてしまい、母親に変な顔をされた。
「そういや親父は?」
「今日は遅くなるって言ってたわ」
「最近多いよね、父さん。浮気でもしてるのかな」
シュンの無粋な言葉に俺は容赦なく鉄拳をお見舞いしてやった。