阿部「三橋、ABCの意味知ってるか?」

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513未来の嫁が可愛すぎて(略)2
※ピョア系注意・我慢できない追憶編その2・中村の続きは書く気がおきたら

二回目の合宿も群馬の山間にあるあの場所だった。
さすがに今回はあの時のような人間関係間のぎこちなさは存在しない。代わりに修学旅行に来たようなあの独特の雰囲気がある。
好きな子はどうなのか、エロ本がどうだとか、前回から随分踏み込んだ話をして、1日目の夜を過ごした。
3日目には三星との練習試合を控えている。皆は練習の疲れも手伝って早々に寝床に付く事にしたが、電気を消す際に花井が辺りを見回し、
「あれ?まだ三橋はトイレから戻ってきてないのか」
5分前だかにこの部屋の出て行ったきり、三橋は戻ってきていなかった。田島はにししと笑い、
「もしかしてオナニーしてて遅いのかな」
「いや、三橋にそれはないだろ。トイレで幽霊に出会って失神してたりな」
泉もまた茶化すように笑った。その意見に巣山や沖も「いかにもココってでそうだもんな…」と頷く。
合宿所として使用しているのは老朽化が進んだ日本家屋。人の所有物だから管理は行き届いているが、
柱や天井の所々が痛んでいるのは否めない。昼間は趣きのある雰囲気であるものの、夜は一転、
5月上旬の冷たい空気と共に陰鬱な空気を纏っている。お化けなどの類を三橋は苦手にしているのかは
まだ知らないけど、一応バッテリー兼恋人としての立場から心配になる。
「オレ、見てこようか?」
見兼ねたオレは「先に寝てていいから」と冷たく、静かな廊下に出た。隣の部屋の後輩連中は既に寝たのだろう、
静まり返る廊下に誰だかのいびきが響いている。花井たちが消灯したのを確認した後、歩を進めるとトイレへ向か
う廊下の途中、玄関へ目をやると違和感を覚えた。玄関に明かりを灯してみれば、三橋の靴がない。しかも
玄関の鍵が開けられてることから、きっと三橋は外に出たのだろう。トイレは中にあるのにどうして?と疑問を抱きつつオレも外に出る。
(もしかして投球練習してんじゃねーだろうな…)
まさかと思い、月明かりが柔らかく照らす庭を抜けて、裏手にある小さい練習場へ向かうと、やはり茶色いホワホワ
した頭がバックネットのところに見えた。風邪引いたらどうすんだよ!憤り通り越して呆れてしまう。
「三橋!」
少し大きめの声で呼んだつもりだったけど、ほぼ無音なこの場所じゃ思った以上に良く響いた。オレが来たことに
気付いた三橋はしゃがみ込んだ体を大げさに体を揺らし、ぎこちない動きでオレの方に視線を向ける。遠目からだが、やけに顔が赤い気がする。
「お前さ、勝手にこんなトコに来て練習…」
バックネット裏に丸まった三橋を近くで見てみれば、赤い顔の理由がすぐに分かった。オレが言及する前に、「ま、待って!」と慌てた三橋が背を向けながら
立ち上がって、ジャージを穿き直す。そして、オドオドした様子でコッチへ向き直った。