阿部「三橋!朝練前にデザートだぞ」

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93fusianasan
注意 三橋未登場・エロ無・捏造有


自分の高校に硬式野球部ができた事をついさっき友人から伝え聞いた。
去年うちの野球部が軟式だという事実に絶望した俺には何とも複雑な話だ。
受験する前に調べておけよって話ではあるけど硬式野球部がない学校があるなんて思ってもみなかったんだから仕方ない。
俺はシニアでやっていたとはいっても別に野球が上手いって訳でもなかったし、ただ野球がしたかっただけだから強い高校とかも調べてなかったのが仇になったわけだ。
入学して早々のあの絶望は今でも覚えている。
部活勧誘でのあの時。野球部(軟式)だけが紹介されたあの時。そのうち硬式も紹介されるだろうって思っていた俺の考えが見事に打ち砕かれたあの時。
まさに血の気が引くという単語がぴったりの状況だった。
その時の友人の笑い声が今でも耳に残っている。げらげらと本当に面白そうに。俺にとっては死活問題だったのに。
本気で落ち込んでいた俺を見てそいつは「わりぃ」って申し訳なさそうな顔をして謝ってくれたのだが後の祭りだ。
俺の心には深い傷跡が残った。
まぁ、その代わりといっては何だが俺はそいつが留年決定を言い渡された時大笑いしてやった。
結局俺はその後どの部活に入る気にもなれずに一年をだらだらと過ごしてしまったわけなのだが、今更硬式が出来るっていわれても嬉しいだけじゃない。かなり複雑だ。
聞いた所によると部員は全員一年で、経験者が何人かいるらしい。練習試合でも結構いい成績を残しているとか。
色んな感情が渦巻いて黙り込んでしまった俺を見てそいつが軽く言った。
「お前入んないの?」
軽い。軽過ぎて怒る気にもなれない。
一年前のあの笑い声がまた蘇ってくる。
「見るだけ見てみろよ。あいつら、頑張ってるぜ。」
そいつは一年前のそいつじゃなかった。少し見ない間に随分と男らしくなっていた。
こいつも色々あったんだな…。
反対に情けなく鈍った俺の体と心。少し悔しい。
いつもはちゃらちゃらしているようにしか見えないその金髪が今日は格好良く見えて俺は自分が随分と老け込んでいるような気がした。
「そうそう、お前投手だったよな?うちの投手はいい投手だぞ、万年ベンチにならないようにな。」
見るだけ、って言っていたのにもう入ることになっている。
相変わらずの能天気さにほっとしつつ、俺は拳を掲げてこう答えた。
「上等。」
笑うな浜田!格好つけたい年頃なんだよ。