チームメイト(巣山と三橋)改行規制死ねばいいのに
「ご、ごめんじゃなくて、あの…」
三橋が俺の手首を掴んだ。手のひらが少し汗ばんでるのが分かる。
「前から、きっ、聞きたかったんだ」
手首を掴んだ指にくっと力が入る。俺は筋の浮かんだ三橋の手の甲にじっと視線を向けたままだった。
何を聞かれるんだろう、三橋の言葉を待つのが怖い。きっと気付かれたんだ。なんであんな事しちゃったんだろう。
「なんで、いつも優しくしてくれるのに、急にそっけなくなったりとか、俺のこと見て暗い顔したり、とかするのに…」
三橋は一度言葉を切って、はっとしたみたいに掴んだ手を離した。
「なのに、なんで、練習中に俺のこと見てたりとか、今みたいなことしたり…するんです、か」
「ごめん」
「あっ、謝ってほしいんじゃなくて…」
三橋は気が付いてるんじゃないのか?そこまで分かってて俺に言わせたいのか?なんで?ハッキリさせて止めてくれって言うためか?
嫌な汗がこめかみを伝っていく。いくら息を吸っても肺に空気が届いてないみたいな気がした。三橋の視線はじっと俺に向けられている。
見なくても痛いくらいに感じた。それから逃げるみたいにTシャツの袖で顔を汗を拭う。
「言えない」
「なっ、なんで」
「自分に自信がないから」
実際、三橋の事が好きだと自覚してからの俺は酷いもんだ。阿部や田島に嫉妬して、些細なことで腹を立てて、練習にだって身が入らなくて、それなのに諦めることもできなくて、何もかも中途半端で。
「自信?」
「そう。だから今はまだ言えない」
いつになったら言えるのかも分からない、言っていいのかも分からない。三橋は本当に俺の言葉を聞きたいのだろうか。
「じっ、自信なんか、俺もない…」
聞き取るのが難しいくらい小さな声で三橋が言った。
「だけど、みんなで一緒に勝った時はちょっとだけ、自信みたいなもの、感じるときも、あるよ」