阿部「立て!立つんだ三橋!」

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876あおき(めばえ)
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「なんでそんな見え透いた嘘つくんだよ?」
別にいいけど。独り言つように呟くと三橋は小さく肩を縮めた。
「ウソ、じゃないよ。阿部くんも、そう、言ってた でしょう」
ふーん?おれは鼻を鳴らして返事をした。
「だって、そーだったんだよっ」
「そーなの?……まぁ、いっか」
まあいいんだ。だって結局、それは阿部と三橋の問題でしかなくて、おれにどうこう言えるもんでもない。
二人が何を書き直したがっているのかなんて、直接、こいつらの口から聞かない限りは想像もできないが、そもそもそれはおれが介入するような事柄じゃない。
ここまで付き合わされてしまったのは、おれがいままで首を突っ込み過ぎていたことへの正しい意味合いでの罰だったんだろう。と、考えておくことにする。
まあ、本当は阿部の気持ちもなんとなく分かるんだ。あいつがこだわっていたのが何なのか、おれは耳にタコが出来るほど吹き込まれたもんだから。
でもどっちにしても現実の世界にはリセットボタンもアンドゥも存在せず、やり直しなんか効かないんだ。
阿部がそのことに気づいているなら、そこから先はそれこそ知ったこっちゃない。けど三橋はそこんとこ理解してるんだろうか。

その後、めばえちゃんが家に来た時の対処法について二人で論じ合った。
「やっぱ、沖くんは隣に座らないと、イケナイ。正面は、表情が必要以上に見えてキンチョーするし、
 隣に座ってる方が、気持ちが近い。それに手、繋げるよ。繋いであげたらイイと思うよ」
そのためにはテーブルは片付けた方がよかろうという推論が、部屋を俯瞰することで導かれた。
なにしろテーブルとは名ばかりの布団をはぎ取ったコタツ、しかもシングルタイプ。いわゆるカジュアルコタツであるからして、隣掛けするスペースはないに等しい。
おれたちは卓上の細々した菓子やら雑誌やらティッシュペーパーの箱やらをベッドの上に放り投げると、六角レンチを手にして解体にいそしんだ。
それで天板と足をベッドの下の空きスペースに押し込めようとしたんだが、思いついて先に頭を突っ込んだ。
埃の積もった薄暗い床面に情けなく横たわったファイル。一旦、頭を抜き出すと肩だけ押し込んで指の先っちょでつまみ出す。
懐かしい顔が白い埃を被ってそこにいた。父親のプレイボーイから切り出してファイリングされた、おれの女神たち。
無線LAN環境が整ってからはとんとごぶさただった。シャワーに海水に濡れ濡れで、すわってヘコんだ足の付け根や柔らかく盛り上がった胸の上にまばらに散った浜辺の砂。
縦筋もヘアーも見えてんじゃないかという、久しぶりに見ると馴染み深さからか昔別れた幼稚園の保母さんと再会したかのような、
感慨の方が深くてチンコはあんまり反応してこないけど、やっぱ素晴らしいコレクションだ。我ながら。
ふと気がつくと三橋が興味津々で後ろからのぞき込んでいた。
「いる?」
棄てるのも惜しいし、とたずねてみたが三橋は顔を赤くしてブンブン首を振るだけだった。
おれはやっばりどうしても名残惜しいものの、万が一めばえちゃんに見つけられたらと思うと気が気でなくて、こっそりと父親の書斎に忍び込み、ガラス貼りの本棚へ忍ばせた。