阿部「立て!立つんだ三橋!」

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80fusianasan
俺の名は美女山俺吾郎。豊満な肉体とキッカイな容貌がウリのスラッガーだ。夜のバットも猛打賞。
そんな俺は中学卒業後、「美女大好きサド山高校」(以下S山と略す)へ進学した。コーチが、俺の名前に奇縁を感じたかららしい。
「お前はうちに来るために生まれたような奴だよ」
ガチムチ系のコーチが頼もしげに俺の肩を叩く。俺は思わず興奮してウッホウッホと声をあげた。
だがコーチは俺の好みじゃない。残念だったね。

さて、新監督の下で躍進を図るS山は猛練習に明け暮れる日々だが生まれついてのスラッガーである俺には何ほどでもない。
部活動に加えて自分で組み立てたメニューもこなし、それでもなお俺のエネルギーはあり余っていた。
余剰エネルギーは最終的に性欲に転化される。男なら誰でも分かる話だ。
俺は性欲の発散場所を求めて金属バット片手に寮を抜け出し、夜の埼玉をウッホウッホと飛び跳ね、さ迷い続けた。
婦女暴行はマスコミの格好の餌食となるのでまずい。というわけで男を狙うことにした。
ミッドナイト・サイタマをワンダリングするうちに俺はどこぞの立派な一戸建ての前に立っていた。表札には「三橋」とある。
ツイーンとスライドして庭先へ回ると、楽しげに団欒している家族の姿が目に入った。
正確には、両親とおぼしき男女の間でおとなしそうに食事をしている男子に目線が釘付けになった。
俺と大して年が違わないであろう(ちなみに俺は三十歳以下に見られた例がない)、そいつは一言でいえばキモ可愛い系。
おっと、俺のアンダー赤バットが神主打法のセットアップ完了! 今夜の獲物はあいつだよ監督。
俺は金属バットをくるりくるりと回転させながら、巧みなすり足で玄関に回り、ぶちかましを浴びせた。
野球をやらなければ角界の風雲児と呼ばれたであろう俺の質量に耐え切れず、玄関は悲痛な悲鳴と共に砕け散った。
居間に踊りこむや、両親とおぼしき男女を俺の太っ腹で軽くいなして失神させ、
茶碗片手に呆然の男子の襟首を引っつかみ、そのまま二階の寝室へホップステップジャンプ。
「大人しくしな。悪いようにはしねえよ」
とミッキー・ローク風にいったつもりだがウッホウッホとしか発声されない俺の体質が恨めしい。
いいさ言葉などジャマなだけだ。実力行使で分からせてやるぜ。
俺は男子の衣服をひん剥いて自分も華麗にクロスアウトすると一気に押し倒した。
さあバッターは美女山俺吾郎。対するピッチャーは三橋家の男子。名前など知らん。
俺吾郎、バットをおおきく振りかぶり、打ち込んだァーッ! これは太い! これは大きい!
前戯も無視した強烈なピストン運動に、ピッチャー早くも失神寸前。
おっと、ここで審判もとい警察官が登場。どうやら目を覚ました両親が呼んだ模様です。
警官、大きく腕を掲げた。逮捕! 逮捕だー! 今シーズン最初の逮捕者が出ました。
俺吾郎、警官に引っ立てられて退場します。ピッチャーは目を覚ましません。大丈夫でしょうか、解説の中村さん。

そんなわけでスラッガー・美女山俺吾郎の伝説は誰にも知られることなく終わったのだった。(終わる)