阿部「立て!立つんだ三橋!」

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704潔癖症
※神経症・虐待描写・キャラ、背景改編注意

(空白)

口の中には、まだじゃりじゃりとした感触。毛が喉奥に絡み付いて、軽く咳込む。
どろどろジェルの“のり”っぽい甘味と、お米のでんぷんの甘味の相性は最悪だった。
カルピス飲んだ後に喉に絡む、ぬめぬめした“たん”がずっとまずくなったもの。そんな感じ。
なんだか股の間がすっきりと言うか、ちくちくと言うか、とにかく違和感たっぷり。
あとは耳がじくじくと痛かった。ちんちんの先っぽがひりひりする。お腹の真ん中がじわじわして、体中が異変だらけ。
手首がどうしようもなくかゆかった。例えるならヘドロの水槽に手を突っ込んだような、気持ちの悪さ。嫌悪感。
更に、こんな時でもどうしようもない思考回路は、まだ嫌悪感情が湧き上がることを嬉しがっていた。
男なのに女みたいに犯され続け、罵倒され、ゴミのように扱われることの繰り返し。
いつからか、それらが“当たり前”として日常に組み込まれていた。
学校に行って、呼び出しを受けることが当然になっていた。それはもはや義務だったのだ。
三星時代、学校に通うのが億劫に思えた時があった。でも、中学は義務教育だった。
イヤだと思っても、それがやらなきゃいけない義務なら、やるしかない。
逆にマウンドに立つことはスキだった。スキだったから、エースを譲れなかったマウンドを降りなかった。エースはマウンドに立つのが常識、それはある意味――義務だ。
こうして一度義務に縛られてしまえば、あとはそれに従うのみ。
だって、自分から行動するのが怖かった。何かをして、失敗したり、これ以上嫌われるのが怖かった。
スキもイヤも、義務なら、誰かに課せられたことなら、何かあった時、その誰かにも肩代わりしてもらえる。
マウンドでの義務は、こうして西浦に繋がった。通学の義務があったから、西浦で野球を続けられた。
誰かに指示されなきゃ動けないなんて、そんなのすごくカッコ悪いと思う。でも、自分が行動した結果、誰かに不快な思いをさせて嫌われるくらいなら……。
嫌われたくない、野球を続けたい。
でも野球、続けられるのかな。
投手のために用意されたマウンドを汚したのは、他の誰でもない自分自身だと言うのに――。
キレイにすれば、まだあそこに立っていられるだろうか。
だったら、キレイにしなきゃ、気付かれないように。
キレイにしなきゃ、傷付かないように。