>>431あたりから 爺さんと三橋
お前の為にやっているんだ、と髭の奥に埋もれた口が言葉を紡ぐ。
お前が困る。儂だって憎くてこうするんじゃない。
十一月の夜は冷える。
庭に敷かれた白い玉砂利が裸足の足の裏に突き刺さるように冷たい。
そこから真っ直ぐに三橋の体を貫いて、お前に咎があるのだと責め立てる。
はい、わかってます、とつっかえながら返事をすると、どうして儂の目を見て返事をしないと叱責された。
震える顎を引き結んでなんとか目線を祖父の顔の中心、鼻の辺りまで持っていく。
だがそこが限界だった。
射抜くような目。
視線を合わせたらもっと怒られるような気がする。
祖父には嘘が通じない。
自分の為だなんて嘘だと思っている、そんな三橋の浅ましい心が見透かされてしまう。