阿部「俺のチンコは200万馬力!!」

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688影法師
※屋根裏の番外で阿部視点。蛇足でスマン

凶悪犯罪や児童虐待などの嫌なニュースを見聞きする度に、暗い気分になるのは程度
の差はあっても誰しも同じことだろう。
だけど、そのニュースが終わってしまえば所詮他人事としか捉えていなかったのだと
俺は三橋を失いかけて初めて知った。
三橋が朝の練習に来なかったあの日の俺の不吉な予感は現実のものになってしまった。

「阿部君、オレ」
三橋はそこで黙った。
いつか2人で話をした公園のベンチ。
部活はテスト期間のために休みで、俺たちは誘い合わせてもいないのに公園の前で
自転車を止め、2人でベンチに腰を下ろした。
すでに太陽は大きく傾き、俺と三橋の影が地面から長く伸びている。
あのとき、三橋は投球のことを言われると思ったのか真っ青な顔をしていた。
どうしてお前はなんでもかんでも自分が悪いって思うんだろうな。
あれから2ヶ月くらい経った。
何もかも以前の通り、という訳にはいかないけれど、野球の練習で思いきり体を動か
していれば、その間は他のことを考える余地がないから、三橋に対しても普通に接す
ることができた。
だけど、日常のふとした瞬間に三橋が翳りのある表情を見せる度、俺は何とも言えな
い無力感を感じた。
お前の心の中ではどんな嵐が吹き荒れているんだろう。
バッテリーとしては元に戻ったけれど、俺と三橋の新たな関係は薄い氷を踏むような
危なっかしいもので、俺は三橋を近くなったようにも遠くなったようにも感じている。
近くなったのは皮膚で、遠くなったのは心。
「いつか、話す」と三橋は言ったが、そのいつかは永遠に来ないか、来ても遥か遠い
先のことだと思っていた。