阿部「俺のチンコは200万馬力!!」

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647「のこされた、ことのは」
※「片恋」続き エロ無注意 一部地域になったらスマン・・・
朝練に向かう道が煙る。
稲を刈り上げた田んぼの藁に火が放たれていつまでもくすぶっている。
乾いた籾殻にユックリと小さな赤い火が伝い黒く焦がしていく。

オレは咳き込みながら、グラウンドの囲いをくぐる。
「ちーっす」そこココに声がこだまする。
ベンチのところで着替えをする。肌に空気が冷たい。
昼間はまだ結構暖かいけれど朝と夜は大分冷えるようになった。

身体のあちこちに出来た細かな傷も、首に残っていた手の跡も随分薄くなった。
毎日が少しずつ過去の物事を消していく。それが今は少し悲しい。

オレは敢えて毎日を以前と変わらないように過す。
集中していれば、思い出さない。思い出さなければ辛くない。
けれど、思い出さなければ消えてしまう。どこにもなくなってしまう。
思い出すために少しだけ立ち止まる。誰にも知られない様に。

朝練の上がりに、田島くんから呼び止められた。
「レンレン、渡しておく」小振りなクラフト用紙の封筒を1通手渡された。
「な に?」
「野球教本のカバー裏から出てきた これはお前宛だ だからお前の分」
田島くんの顔がいつに無く険しい。そういえば朝から1コも口を利いていない。
「こ れ もしかして この字」
「そうだよ、俺宛のも入っていた で もうひとつがお前の分」言い終わると
田島くんはきびすを返してさっさと行ってしまった。

小さな丸文字で表書きに“れん へ”と書かれていた。中を見ると
二枚組みの便箋が同じ小さな丸文字で埋められていた。