花井「三橋!あっくんて呼ぶな!」

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697fusianasan
チームメイト(巣山と三橋)

「はい、それじゃあ15分休憩!」
「だぁーっ」
「あっちぃー」
モモカンの掛け声に、みんな一斉にその場に座り込んだり、ベンチに向かったりした。
この時期の練習はキツイ。暑さと日差しが気力も体力も奪うからだ。
俺も水道で顔を洗ってから、一番端のベンチに寝転んだ。目を閉じても眩しいから、腕で目元を覆って息を吐き出す。
離れた所からみんなの声がして、篠岡があはは、と大きな声で笑っていた。
その声に、いつも笑顔で俺たちの面倒をみてくれる彼女の事を、素直にすごいなと思った。
ジワジワという単調な蝉の鳴き声を聞いているうちに、なんだか眠くなってくる。
熱いけれど、グラウンドを吹き抜ける風は心地いい。
少しうとうとし始めると誰かが近づいて来る気配がして、ギシ、とベンチが傾ぐ。
「巣山寝てるー」
本当に寝てるわけじゃないから、起きようと思えば起きられたけど億劫だった。
起きようかどうしようかと迷っているうちに、泉が田島に声をかける。
「田島、寝てんならほっといてやれ」
「うん」
田島はベンチの傍を離れたらしいけど、まだ人の気配がした。
誰だろう。でも、放っておいてくれるなら気にする必要も無いか。
そんな事を意識がはっきりしないまま考えていたら、額にぺたりと手が触れた。
少し冷たい手だ。誰か気になって腕を退かして目を開ける。
頭の横に三橋が座って、俺を覗き込んでいた。額にあるのは三橋の手だ。
至近距離で目が合って、息ができなくなる。
「なっ」
「うわっ」
思わず飛び起きると、三橋は大げさなくらい体を引いた。
「びっ、びっくりした…」
「ごっ、ごめん。えーと、あの…」