http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1193027013/437 ※鬱注意 <阿部視点>
一度落ち着くと、体ががたがたと震え始めた。頭の奥がぎりぎりと熱く燃える。
その熱に反して、体中をめぐる血液が冷たく凍り付き、寒気に似たざわつきが幾度も背筋を這い上って行く。
「・・・・許せねぇ」
誰だオレの大切な投手にあんなことしたやつは。
三橋はオレのもんだ。オレが大切に育てて、大切に使っていくんだ。
オレのものに誰が手を出したんだ。誰だ、誰だ、誰だ。
誰だってかまわない。誰だとしても、許せない。絶対に許せない。許すもんか。
三橋はオレのもんだ。オレの、オレの、オレの、オレの、オレの、オレの!
無意識に握っていた掌に、爪がぎりぎりと食い込んでいた。その拳を勢いに任せて、近くのロッカーに打ちつけた。
ガンッと大きな炸裂音が響き、べコリとロッカーがへこむ。
「くそ」
深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き、「落ち着け」と何度も自分に言い聞かせた。
今オレが、怒りに捉われて、冷静さを失って暴走したって何の意味もない。
オレより辛いのは、三橋じゃないか。
そうだ、三橋!
あんなフラフラで危うい状態の三橋を、何で一人にしてシャワー室に行かせてしまったのだ。
「なにやってんだ、オレ」
もう一度ロッカーを力任せに殴りつけた。そうとう頭に血が上っているようだ。
今は三橋に何かした野郎よりも、不甲斐無い自分が許せない。
両手で頭を抱えて、何度も落ち着けと唱える。
そしてもう一度深く息を吸い、気合いを入れるために、両手でぱんと自分の頬を打った。
今は三橋のことを一番に考えろ。他のことは全部後だ。