阿部「三橋!ちゃんとオレのちんこ握ってろよ! 」

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808fusianasan
「今日のみそ汁の具は油あげとあさり、どっちがいい?」
「おっ、お、オレはあさりがいいで、す!」
「オーケー。……よく迷わないで答えられたじゃんか。偉いぞ、三橋」
「ふ、フヒッ!」
実兄にくしゃりと頭を撫でられ、三橋は絞まりなく表情筋緩ませて笑む。その二人のやりとりを、釈然としないといった雰囲気を纏い傍観するシュン。
ここ数日の間、兄である男は以前のように相手を人とも思わない扱いをすることを改め、三橋と交流を深めていた。
あの、頭からバケツいっぱいの氷水を浴びせるような冷血男の手が、今は慈しむような優しい手付きで頭を撫でている。夜の躾だって、近頃は愛撫から始まる穏やかなものだ。
自分達には目的があり、その為に今まで兄弟二人が協力して三橋を飼い殺してきた。ところが、兄の行動はそれを裏切るようなものばかり。
ついに情でも湧いたかと疑いたくもなる。
(クソッ、バカ兄貴のヤツ……)
兄の態度の急変が理解できず、シュンは訝しげに首を捻るのみであった。

***

「…優しくしすぎ?」
「そうだよ。兄ちゃん、三橋さんを犬奴隷にするんじゃなかったの?………今の兄ちゃん達を見てると、ただのフィジカルなホモカップルにしか見えないんだけど」
その晩。三橋の頬についた米粒を口先でついばむ兄を見て、ついに不審が頂点までに達したシュンは、人の寝静まった頃に兄に掛けあった。
もし、敵に惚れただの弁解の一言でも兄の口から出たら、同盟は解散してやるという意気だった。
しかし、兄は常と変わらぬ尊大な態度でシュンを見下すと、フンと鼻につく笑いを溢す。
「甘いよ、お前。犬奴隷のことがまったく理解できてないね」
「?…それ、どういう意味?」
「例えば……そうだな、お前が悪質ないじめを受けていると仮定する。
で、ある日突然そのいじめがぴたり、と止まりいじめてた側が優しくなったとしたら………どうする?」
「うーん………とりあえず、いじめられないように相手の機嫌を取る」
「正解。そいで機嫌を取るっつーのは、逆に言うと好かれようとすることだ」
兄と言いたいことを薄々理解し始め、シュンの顔からさっと血の気が失せる。
(躯だけじゃなく、心から尽させてやるってコトか……)
我が兄ながらえげつない。これが敵に回っていたと思うと――……末恐ろしくて膝が鳴った。
「犬っつーのはご主人サマに絶対服従じゃなきゃいけねェんだよ。――なあ、シュン?」

ふたりはアベキュア!