「はよ。寝られたか?」
「……う、ん」
朝、迎えに来た田島は元気のない三橋を見て顔をしかめた。
眠れないのも無理はない。
事実が歪められているとはいえ、三橋が犯人だと皆に疑われてしまった。
自分がしたことを切っ掛けにして悪意が広まり、田島まで巻き込んでしまった。
元々罪悪感にさいなまれながら実行した三橋には殊更辛かった。
「三橋、あいつら……面と向かっては言ってこないと思うけど、あんま近づくなよ」
「うん」
これ以上嫌われたくはない。下手に動いて疑惑を深めるのもいやだ。
頷いた三橋を悲しげに見つつ自転車に跨り漕ぎ出そうとしたとき、田島の携帯が鳴った。
二人揃ってさっと顔色を変えてしまう。
田島の携帯には、まだメールも電話も着たことがなかったのに。
恐る恐るディスプレイを見ると、画面には栄口の名が表示されていた。
「もうマジびびったって……とうとうオレにまで着たのかってさ」
「ごめん、でも三橋はまだ電源切ったままだろうと思ったから」
合流するからもしまだ家にいるなら待っていてほしい。
栄口の用件はそれだけだった。
やってきた栄口は、田島たちの犯行ではないかと思わせるメールを受け取ったと言ってから、「でもオレは信じないよ」と言った。
「皆、本気で信じてる訳じゃない。誰でもいいから犯人だって決め付けたくなってるんだ。
オレたちの中に犯人がいそうだってのは、きっともう、皆思ってることだろうし……不安なんだよ」
「分かってるよ。けど……けどさ!」
「だから認めろ、なんて言うつもりないって。オレ、どっちの気持ちも分かるから何とかしたいんだよ」
このままギスギスすんの嫌だろ、と栄口が言って、田島も食って掛かるのをやめた。