>>270 「な、オレお前のために3日間オナニー我慢したんだぜ?」
「や、やだよ…そんなこと、言われても…」
皆が帰った部室の中。そこに残っているのは田島と三橋の2人だけだった。
田島が1歩、また1歩とにじり寄るたびに三橋もそれに合わせて1歩2歩と下がっていく。
トン、と三橋の背がロッカーにあたる。逃げ場はない。そう三橋が気付いた瞬間、田島はにやりと笑った。
今日の田島は朝からおかしかった。普段であれば、三橋の姿を見かけたら声をかけるなりなんなりと構ってくれる。
しかし、目が合うたびにそらされたりだとか、どちらかと言えば三橋を避けているように見えた。
(もしかして、オレ、何かしちゃったのかな…)
朝も、HRも、体育の授業も帰りのHRも。そして授業後の部活までも田島の態度は変わらなかった。
「たじまくんっ」
バットを片付けている最中、田島と2人きりになるチャンスがあったので思い切って三橋は声をかけることにした。
田島と話がしたいと思ったのだ。
「何?」
「あの…」
しかし、返事をする田島の声は冷たく愛想のかけらもなかった。
じっと見つめられると、言いたいこともなかなかいえない。
「ちょっと話したい、から、着替え終わったら…ちょっと時間…」
いいよ、そう言って田島はさっさとどこかへいってしまった。