阿部「三橋、いよっくに(1492)見えるは?」

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164fusianasan
職人や俺らが寝付いたところで、こそーり投下 8つ前のスレタイSSです

どうしてこんな事になったのかなんて、誰にも分かりはしない。
ただ、それの所為で俺たちは未来の選択肢とやらが確実に狭まってしまったのは事実だ。
俺たちがどう頑張ったって無駄なんじゃねえか?皆そう思っていても口にしない。
大人は黙って下を向く。
その大人だって、もうそんなに残っちゃいねえ。

「ラスト1ぃー 頼むぜー」 普段口にしない様な言葉を吐く。 
ミットを敢えて大きな音を出して叩く。ど真ん中にミットを据える。
構えたミットに目掛けて球は真っ直ぐに飛んでくる。
グラウンドの乾いた空気に捕球の音がこだまする。これが最後の最後になるのか。

今日、この場所でこんな風に投球練習しているのだって奇跡に近い。
明日はもうココを離れる俺たちに特別にと
割り当てられた仕事を切り上げさせてもらった。
たった1時間でも貴重な時間だ。練習着袖を通すんだって何週間ぶりか?

俺は縫い目のほつれかけた球を握り締めて三橋に歩み寄る。
三橋のほうもこちらに近づいてくる。
「お疲れさん、今迄世話になったな」
三橋は何故?と言いたげなキョトンとした顔をしている。
「オレ、こそ世話に なりっぱなしだった」
「俺は、明日っから南だ、詳しい場所は教えてもらえないけどな」
「オレ は 大陸 だ」