阿部「三橋、いよっくに(1492)見えるは?」

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119かごめかごめ 7日目
見えない空気の壁が分厚く立ちはだかっている。
田島は三橋を振り返ってから、少し視線を下げた。
目線を辿った先に自分の手があることに気づき、三橋は田島を見返した。
恐る恐る、指先を上げていく。
気づいた田島が、きょとんとして、それから破顔した。

「オレがついてっから」
「……うん」

田島は三橋の手首を掴むと、軽く引いて歩き出した。
窓際の席に固まっていた花井たちの正面で立ち止まり、「オハヨ」と声を掛ける。
バラバラと返事は返ったがどれも短く控えめで、三橋たちを見る目は浜田のそれと変わりなかった。

「なんかあった? 避けられてるよーな気がすんだけど」

単刀直入に切り出し、田島はそのまま泉を見据える。
立ったまま胡乱な視線を投げかけていた泉は、居心地悪そうに目をそらした。
田島の目が水谷を素通りして花井で留まる。
分かっていたのか、花井は少しも視線を逸らさなかった。

「メール、やっぱお前のところには着てないんだな」
「メール? また着たのか?」
「――今回はやたらと長文でな」

投げるように携帯を放って、阿部が手近な席にどさりと座る。
空で受け止めた田島は画面に目を落とし、しばらく目で追ってから顔をしかめた。

「――なあ、お前ら、まさかこれが原因なのか?」

阿部も花井も、水谷も泉も、誰一人答えない。
携帯には、びっしりと文字が並んでいた。