巣山と三橋
そうだ、思い出した。あいつ確か名前中村とかいったっけ。まともに話したの多分始めてだな。
わざわざ日曜に応援来るようなタイプには見えないけど、三橋に彼女がいるか聞くって事は、中村って三橋の事が好きなのか。
中村と三橋が並んでる所を想像してみようとしたけど、無理だった。なんか、中村と三橋って住んでる世界が違う感じするし。
いや、それ以前に三橋に彼女っていうのが想像できない。でも、そうか。三橋もカッコイイとか言われるんだ。
彼女とかできたら、三橋もちょっとは自分に自信つくのかな。それでいい方向に行くならいいけど、でもなんかなぁ。
その相手が中村ってのは、なんかちょっと。あんまりいい感じはしなかった。
授業が終わって練習に行こうと、栄口の席を振り返ると中村がいた。
俺と目が合うと、栄口にありがとう、と言って席を離れる。また三橋の事聞いてんのかな。そんなに三橋の事好きなのか。
「三橋の事聞かれた?」
別に中村が三橋の事好きでも俺には関係ないんだけど、なんとなく気になって栄口に聞いてみる。
だけど、栄口は怪訝そうな声で聞き返してきた。
「三橋?」
「三橋に好きなヤツいんのかって聞かれたんじゃねーの?」
「いや」
首を振ると、栄口は席を立ってカバンを肩にかけた。行こうと俺を促す。
教室を出て歩きながら聞いた言葉に、俺はさっきの嫌な感じが何だったのかを知った。
「阿部の事聞かれた。阿部に彼女いるのかって」
どうゆう事なんだろう。中村は三橋の事が好きなんじゃないのか。
「俺、三橋に彼女いんのかって聞かれたぞ」
「ええ?」
栄口は眉間に皺を寄せて俺の方を見た。
「それってさぁ」
「なんか、な」
嫌な感じ。目立つポジションのヤツだったら誰でもいいって事か?
阿部に関しては心配する必要は無いと思うけど、三橋は怪しい。
手作りの弁当なんか渡されたら、それだけでいい人って言って言い出しそうだし。
「知ってる?中村って前はサッカー部のヤツと付き合ってたんだよ」
それは俺も知ってた。つか聞いた事あった。あまりいい印象が無いのはそのせいだ。
運動部の目立つヤツには、よくちょっかいかけてるって話だったから。