阿部「三橋にもう一個穴が欲しい」

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191セクサロイド384
※人外パラレル・阿部視点注意
昨日の続き

「どうしたんだよ、お前達」
先に駅に着いていたメンバーは揃ってオレ達の顔を神妙そうに眺めている。
あれからすぐに我に返り、「冗談だよバーカ」とあの変な雰囲気から脱した。
そして三橋はあの時から中村の時の反応とは違って、ずっと熱に浮かされたような顔をしていた。
いままで未来のオレとしていたのに何故だ。やはりアイツにとってはオレはオレ、パパはパパなのだろうか
昨日、母親を手伝っている時も、勉強している時もずっと心ここにあらずといっていいほど、呆けていた。
オレはオレで、そんな三橋と見ているだけで恥ずかしくなり、
必死になって余計なことを考えないよう数式を頭の中に叩き込んだのだった。
「阿部、死にそうな顔してるけど…」
栄口が大丈夫か?と心配そうに見てくるが、勉強しすぎて頭がボーっとするだけだ。
途中で買ってきた栄養ドリンクを取り出して、一気に飲み干した。
三橋は早速はしゃいでいる田島に引っ張られ、改札をくぐるところだった。
まだ呆けているが、大丈夫だろう。遊園地の楽しさであんなこと一気に吹き飛ぶ。
その考え通り、三橋は敷地内に並ぶアトラクションにすっかり心を奪われていた。
「は、はじめて!ゆうえんち!テレ、ビでしか見たことなかった」
他の人間が聞いたら、お前はかなり不憫な子に見られていただろう。
「よかったな」と柔らかいヒヨコ頭をポンポンと叩き、ジェットコースター乗り場に向かう集団の後ろを行く。
平気だ。一昨日の夜のことなどこの興奮の前では小さい事だ。この調子ですぐ忘れるだろう。
初めての絶叫マシン、初めてのお化け屋敷、初めての…大半のアトラクションを制覇した頃にはほぼ全員クタクタだった。
日が傾き始めた園内のファーストフード店で、空腹を満たし、最後のアトラクションをどれにしようか検討中。
田島が平然として「コレ食べたらゴーカート乗ろうぜ!」とハンバーガー片手に三橋へ話している。
その三橋はさっきまでお化け屋敷でギャーギャー泣き喚いてぐったりしていたのに、すで平然と紙パックの牛乳を啜っている。
「あいつら元気だなーお前も朝よりは元気になったか?」
紙パックのカフェオレを啜りながら隣に座っている花井がオレの顔を見てため息をつく。それは店内の喧騒で聞こえなかった。
「あぁ、なんとかな。4度目のジェットコースターで一回死にそうになったが。」
三橋があまりにも喜ぶもので、田島と水谷たちが調子に乗って何度も並んだせいだ。
喜んでいる姿を見るのはいいが、犠牲になるのは勘弁なんだけど。