「はっ……う」
ベッドの上で寝返りをうつと、最近になってようやくまた見慣れてきた天井が目に入った。
夢の中で見て聞いた阿部の言葉が、まだ頭の中で木霊している。
三星学園の専用グラウンド、部室棟の建物の影、茂みの奥。
今でもはっきりとあの光景が思い出せる。
「う、ん……」
硬く目を閉じるとより鮮明に浮かび上がる記憶。
いつからだったろうか。
夜の夢にこの光景があらわれるようになったのは。
そして幸せな夢見心地気分のまま、手が自分の体に伸びてしまうようになったのは。
『オレはお前のこと――』
夢の中で、特に際立ってはっきりと目立つ台詞がそれだった。
目が覚めても何度も頭の中で繰り返されてしまうその台詞は三橋にとって一種の中毒性すら秘めている。
今夜もまだ、空が明るくなり始める前に覚めた体が熱を持て余してしまう。
「ん、んん……」
ごそごそと布団の中に潜り込んだまま、ハーフパンツの隙間から手を差し入れる。
そのまま下着の中におそるおそる侵入してみると、やはりペニスが勃起していた。
「ひゃっ、う」
自分の手の感触にびくついてしまい、思わず上擦った声が出る。
静まり返った部屋の中ではやけに大きく声が響いてしまうような気がして、三橋はぐっと唇を噛み締めた。
苦い味が口の中に広がる。
何度も同じことを繰り返すせいで傷の治りが遅い。
それをつい昨日阿部に見咎められたばかりだ。
なのに、今日も我慢することができない。
唇を噛むことも、こうして自慰に耽ることも。