三橋はその時すごく眠かった。練習疲れの取れないうちに、群馬まで一人で遊びに行ったからだ。
だから帰りの電車では座席で船を漕ぎつつアナウンスを聞いていた。
こんな状態だったので、外部からの接触に気付かなくなくても無理はなかった。
初め手に何かが触ったような気がしていたが、混んだ電車内だし三橋は気にしなかった。
しかしその何かは明確な意思を持って動いていた。
白い指の爪から股まで緩く揉みながら辿っていくそれは、無骨な手だった。
だが判断能力の落ちた三橋の頭はただただボーッとしていて、
誰かの手が自分の腕を擦ったりしているのが目に入っても見ているだけだ。
そのうち手の動きは過激になってきた。
三橋の手を自分の方に導くと、臀部に沿わせる。
さすがに三橋は変だと思ったが、やはり眠気で動けなかった。
なんだろ、う…これ、やらかくて…でも芯があるような…ねむ、い…あれ、かたくなって…きた…?
ぼんやりしながら手の中のものを触る。目の前の乗客の息が荒いことにも気付かない。
三橋の手の上にゴツイ手が重なり、上下に動かし始めた。
え、なんで、オレの、手…ぬるぬる、してきて、なんだか…
三橋はおぼろげながらもその感触には覚えがあった。しかしそれがなんなのかは思いつかない。
そうしているうちに律動が止まったかと思うと、手の中のものが脈打った。
それと同時に手はもちろん、ハーフパンツからのぞく膝にも生ぬるい液体がかかった。
その上大きな手は三橋の手を三橋の顔まで持っていき、顔に押し付けてきた。
生臭い匂いが鼻腔に広がり、三橋は眉根を寄せた。
口にその液体が押し付けられ、そのまま離れないのでしょうがなく飲み下す。
苦く、喉に引っかかるようなゼラチン質も混じっていて、不味かった。
しかしいよいよ眠くなった三橋の意識は、そこで途切れた。
駅に着いた時、やっと三橋は自身に起こっていたことを知るだろう。
(END)