220 :
潔癖症:
(ト書き)
第三者から、再び役者へと視点が切り替わる。
(アナウンス)
『……舞台は…………いかがでしたでしょうか?』
『至らず……大変申し訳ございま……』
『ですが……を見極める必要性など……』
『肝心なのは……ではなく……』
『……を、救いだすこと――……』
(空間)
そう。気が付けば空っぽだった。現実世界に望みなんてなかった。
遠くに見える微かな光も、絶対にあるとは――それでも――だけれど。
憧憬は所詮個人の思いでしかなく、思考通りに事が運ぶ現実なんて存在しえない。だからこそ、人類は砂漠のオアシスを蜃気楼と知っていて、縋る。そして各々の想い描く理想郷を論ずるのだ。口やかましく。
どうして――そう問われれば、失った場所がスタート地点だったとしか言い様がない。
分岐の潰えた十字路にいたのは、“アレ”。
その時、“アレ”自身は暗闇であり、自分にとっては光彩だった。唯一だったのだ。
(空間)
――みにくいアヒルの子が一羽だと、誰が言ったの?
(空間)