ビリーが大きな荷物を両手に抱えて部屋に入ってきた。
布に覆われたそれは、ひと一人分ほどの大きさだった。
「多忙なお前の慰めにでもなればと思ってな」
それを丁寧におろしたビリーは、白い歯を見せて笑うと、覆いを外した。
そこに現れたものに、俺はしばし言葉を忘れた。
「三橋、三橋じゃないか」
そう。それは三橋廉という少年を精巧に模した等身大の人形だった。
「およそ考え得る限りの最高素材で作られている。
シリアルナンバー384が手に入れば尚よかったんだが、それは叶わなかったよ」
そういって肩を竦めるビリーに心からの感謝の言葉を送り、俺は人形の前に立った。
人形は何も着ていない。三橋の、生まれたままの姿だ。
そこで俺は、自分が三橋の裸をまともに見たことがないことを悟った。
「ビリー、服はあるのか」
「ユニフォームと下着はな。その他については別途オーダーが必要だ」
「すまないが、服を着せてやってくれないか」
「ホワーイ? あまさず鑑賞するには早すぎやしないか」
「いや、いいんだ」
ビリーが三橋の人形に着衣させてる間、俺は背を向け、
窓の向こうに広がるアブダビの風景を目を細めて眺めやっていた。