スレタイ栄口記念。
「え、さっ 栄口くんの、おうちって、お母さん、いない の?」
「うん、弟生まれて、しばらくして死んじゃったんだー」
俺、そんなの知らなかったから、びっくりした。
お昼ごはん、いつも購買だから、お母さん、お弁当作ってくれないの?って、聞いたら…。
「ごっ ごめん なさい」
どうしよう。俺、ものすごい無神経なこと、言った。
「ああ、気にしないでいいよ? 姉ちゃんだって、弟だっているし、親父も元気だしさ」
栄口くんは、そう言って笑うけど、でも、お母さん死んじゃったのは、やっぱり寂しいと思う。
俺んち、お父さんとお母さんと、俺しかいないから、お母さん死んじゃったら、お父さんと二人だけになっちゃう。
そうなった時のことを考えて、俺はすごく寂しくなった。
「じゃっ、じゃあ、おっ 俺、栄口くんの お兄さんに、なるっ」
「三橋が俺の兄さん?」
栄口くん、ちょっとびっくりしたみたいな顔した。
俺、なんか、ヘンなこと、言ったかな。俺なんかがお兄さんだなんて、嫌かもしれない。
だって、俺なんかより栄口くんの方がしっかりしてるし。
「あ、ごっごめん、ねっ 俺、ヘンなこと 言った ね」
急に恥ずかしくなって俯いたた。そうだよ、俺なんかがお兄さんだなんて、嫌に決まってる。
「うん、じゃあ、兄さんになってもらおうかな」
びっくりして栄口くんの顔見ると、笑ってる。
いいの?俺なんかがお兄さんで。
「じゃあ、さっそく甘えちゃおうかなー。兄さん、それちょーだい」
栄口くんが俺のお弁当箱からひょいってエビフライつまんだ。
「あ!」
俺がびっくりしてるうちに、栄口くんは大きく口あけて、エビフライ口の中にいれた。
最後の1個だったのに。
「うー」
「ごちそうさま、おいしかったよ、兄さん」
にこって笑う栄口くんを見て、俺はお兄さんって大変なんだなって思った。