栄口「今日も世界は平和だね、三橋」

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315fusianasan
流れを読まずに投下
※暴力注意

「俺はお前が大っ嫌いだよ、三橋」

腹の上に馬乗りになって、持ち上げた拳を頬目掛けて振り下ろす。
柔らかい肉に俺の握った指の背がめり込んだ瞬間、「ぎっ」と三橋は潰れた声を吐いた。
ぱたたっ。三橋の口から飛んだ液体が床を濡らす。唾液と、それから血液。
俺は自分の唇がゆっくりと弧を描いていくのを止められなかった。
そのまま、俺から見て左へと傾いた顔をもう一方の拳で殴りつけて今度は右へと倒す。
「…ぅ…」
力ない呻き声に背筋が粟立つ。気持ちいい。
「三橋」
名を呼びながら顎を掴む。俺の顔を正面から見るよう向き直らせて、俺は笑みを刷いた唇で問う。
「気持ちいいか…?」
視線の先には両の頬を赤紫に腫れさせた三橋。色白の肌はすぐに色が変わる。
唇の端から細く、唾液と血の混じったものを垂れ流して、三橋はカタカタと震えている。
どうしよう。気持ちいい。
「俺は気持ちいいよ。すげえイイ」
言ってやる。すると三橋は全てを諦めたかのように瞳を閉じて見せた。
すうっと、こめかみへ向けて流れ落ちる涙。

「…オレ も、……くんがすき、で、す…」

――ああ。なんて奴だ三橋は。
こいつは全部わかってる。わかってるんだ。すべて。

「バッカじゃねえの…」
無意識に声が震えた。俺はゆっくりと、上体を屈めて三橋に顔を近づける。
「俺は嫌いだよ、おまえのことなんか」
触れ合わせた唇からは血の味がした。
俺はそれが愛しくて愛しくて、たまらなかった。