クラブ・オレラーノ。ゆうきゃんは阿部の中の人ネタだ。すまんの
※ホストクラブ捏造注意
>>471 阿部の存在はムカつくことこの上ない。大したツラでもねえくせに、この店の扉を潜って
たった三ヶ月で、ナンバー1の座へと上り詰めてしまった。
確かに、この店のオーナーであり、かつてはホスト業界で神と呼ばれたジョバンニさん――
勿論源氏名だが、俺は敬意を表してこう呼ばせてもらっている――のスカウトの腕は
折り紙つき。あの人に憧れて、この店の扉を叩いた俺は彼の目利きを疑うつもりは微塵もない。
だが、癪だ。いくらジョバンニさんの目に留まったとはいえ、俺の後から入ってきた阿部野郎が
さっさと俺を出し抜き玉座へと手を掛けたという、その事実が癪だ。
あいつ、俺より背ぇ低い癖に!垂れ目の癖に!
ぶるぶると握った拳が震える。異変を察知した新人が、視界の端であわあわとキョドりに
拍車をかけている。やべえやべえ。俺は意識して深く息を吸い込むと、それを長いことかけて吐き出してみた。
わかっている。俺のこの感情は単なる嫉妬だ。阿部はムカつく。ただそんだけ。
お前はもう少しだけ、冷静さを身につけたほうがいいよ、とジョバンニさんにも言われたじゃないか。
「…お、俺、さ ん?」
恐る恐る、といった風情でかけられた新人の声に、俺は意識して気持ちを切り替えた。
上げた顔に貼り付けたのは「いい先輩風」なマスクだ。
よし。こうなりゃ世話役押し付けられたこと、逆手にとってやる。
「悪ィ悪ィ。ちょっと色々思い出してな」
爽やかな笑みを口元に、俺は新人を安心させるべく努めて優しげに返した。
見てろよ阿部。お前の知り合い、俺派に寝返らせてやるぜ。
ホストの世界も派閥によって構成されている。ナントカ組やナントカ会関係じゃないが、
舎弟は多いに越したことがない。
俺はとりあえず、阿部の知り合いらしいこの新人を懐柔することに決め、「そういやお前、
出身はどこ?」と懐柔作戦その1〜個人情報公開からお近づきの巻き〜を展開し始めた。
が。新人がキョドりにキョドった挙句、目元を薄赤く染めて――つうかなんで赤面する
必要が?――口を開く前に、控え室をノックする無情な響きによって中断されてしまう。
「朝礼始めるぞ」
返事を待つこともせずに扉を開けたその主は、つい今しがた俺の拳を震わせた阿部本人、だった。