クラブ・オレラーノ。前のはWikiでよろちくび
※ホストクラブ捏造注意。本職ホストの俺、ごめんなさい
「あー…と、レン…だっけ。お前さ、なんでこの世界目指したの」
気を取り直して俺は天然素材に話を振ってみた。とりあえず無難かと思われる志望動機に
ついて問えば、キョドっていたそいつはフヒッと鼻息だか笑みだかよくわからん息を零して、
「しゃ、社会勉強 デス」
と、こちらもまたお定まりな返答。あー社会勉強ねー。あるあるある。
大概の奴がそう言うんだよなあ、社会勉強って。そんな甘い世界じゃねえんだけどよ。
顎に手を当てて渋い表情になってしまった俺なんか見もせずに、新人は斜め下へと
視線を落としながらモゴモゴと続ける。
「べ、勉強になる、って……あ、阿部君言った から」
阿部ェ?
思わぬところで出てきたナンバー1の名前に俺はすかさず返した。「なんだよ、知り合いかよ」
意図せず声が低くなってしまった。新人はウヒッとキモくびくついた後に「はひっ」と
返事になってんだかなってねーんだかコクコク頷きながら返してきた。
…阿部め。俺は舌打ちした。
何とも腹の立つ話だ。てめえの知り合いならてめえで面倒見やがれ。
この台詞に拳を握り締めるのも、実は三度目だ。一人目は学生時代の後輩だとかいう
中村(源氏名はゆうきゃん。なめてんのか)、続いて高校ん時の部活仲間とかいってた水谷
(借金作った挙句、阿部に泣きついたらしいヘタレ。三週間で消えた)、そんで今
目の前にいるキョドり王な新人。何故俺がこいつらの面倒を…。
阿部エエエエエエ。後輩の癖に垂れ目の癖に。指名率が俺よりちょこっといいだけで
でかいツラしやがって…!!
俺の拳に力が篭る。殴られるとでも思ったのだろうか、新人はびくびくと肩を竦ませて
探るような視線でその拳の行方を見守っていた。