それからしばらく待ったけど、阿部君の返事はなかった。
「ね、ねぇ、阿部君、どこに行くの?」
「あぁ、電車もうねーからな。駅前の東横。
さっき電話したら部屋空いてるって」
普通に返事が返ってきたので俺は少し安心した。
もう一度力を入れて阿部君にしがみ付く。
俺は馬鹿だけど、俺はあんなことされちゃったけど、
…別れたくない よ
ぐす…とすすり泣く声に気づいたのか
阿部君はそっと囁いた。
「怖い思いさせてごめんな」
「ん…俺は大丈…」
!?
そこではじめて阿部君の肩が震えているのに気づいた。
阿部君は泣いていた。