阿部「三橋!そーれ!くるくる〜」

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881俺猫
※エロ無し注意

俺は、生まれてまだ日の浅い子猫だ。名前? んなもん知らねえ。
なんだこの冷遇ぶりは。
生まれてまだ日も浅いのに「拾ってください」なんて書かれた段ボール箱に詰められどこかへ捨てられた。
あげくぽつぽつと雨が降ってきやがる。
ああ、こんな事なら生まれてくるんじゃなかった。
元飼い主がアッチ方面をきっちりやってくれればこんな思いをしないで済むのによ。
それにこの雨! 何もこんな時に降り出さなくてもいいじゃねえか。
恨みがましく天を仰ぐ。頭上はどす黒くて厚い雲がみっちり埋め尽くし、遠くの方では稲光が見える。
雨が一層強くなってきた。打ち付ける雨粒が容赦なく体温を奪っていく。
箱の中は雨水がたまり放題。俺は水浴びでもしてるのか?
体を震わせて体温を上げようとしても口ひげすら動かせない。
俺の猫生はここまでか…。観念して瞳を閉じた。


体から重力が消えた。蛍みたいにふわふわと空を飛んでるみたいだ。
あー俺死んだか。
死んでも意識あるもんだな。目開けらんねえけど。


じんわり温もりを感じる。
ありがてぇ! 死んでもずっと冷たいまんまじゃ地獄だもんな。死んだ後ぐらい、いい思いさせて欲しいぜ。
体中に体温を取り戻したことを実感して、深く深く眠り込んだ。


このとき俺を拾ってくれたのが、今の飼い主、廉だった。