709 :
手乗り:
「はあああ!?」
意味がわからず俺は掴まえた声を荒げた。
「なんで羽根だよ!?」
「お、俺さん、どこっ どこ行ってたの・・・!」
「お前羽根生えてたの!?」
「いなつ いなっ いなくならないでえええ!!」
俺の手の中でぴいーっとミハシが号泣する。
俺のハンカチをめちゃくちゃに体に巻いて俺の親指にしがみついて顔をべしょべしょに濡らしてそんな風に泣く。
胸がしめつけられた。
捨てれると思ったって、いなくならないでって、こんなになりふり構わずしがみつかれたことなんて、ない。
「・・・ミハシ」
俺はぐすぐす泣くミハシの頭を撫で、ゆっくりソファに向かった。
荷物をテーブルに置いてソファにもたれかかる。胸のあたりにミハシを置くと、ミハシがえぐえぐ泣きながら俺のシャツにすがりついてきた。
あー、いかん。
幸せだ。
こんなに満たされた幸せな気分になるのはやっぱりミハシが天使だから
だろうか。違うよなあ、そうじゃねえよな。
ミハシの背には羽根があった。ちっこくて、うすい黄色だが、それはちゃんとした
天使の証だった。