浜田「三橋ー、服作るからサイズ測らせてくれよ」

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147家庭の事情
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おしり代理のお兄ちゃんありがとう


 行く宛てはなかった。でも家に帰りたくない。今はどんなツラして、セックスしてた親父と廉の顔を見たらいいのかわからない。
 どうしようかと逡巡していると、ぽんと肩を叩かれた。
「隆司君だろ? 三橋のとこの」
 振り向くと、人の良さそうな顔の男が立っていた。
「あ、栄口さん」
 栄口さんは親父と廉の同級生で、今も家族ぐるみで仲良くしている。男同士で結婚した親父と廉の数少ない理解者でもある奇特な人だ。。
「どうしたのこんな所で。補導とかされたらヤバいだろ」
 どうやら残業帰りと思われる栄口さんが、きさくな感じで俺に笑いかける。
「途中まで同じ道だし、一緒に帰ろうよ」
「・・・・・・、あの、俺・・・・帰れないんです」
 言葉に詰まりながら俯く俺を見て、栄口さんは、ありゃま、といった感じで肩をすくめた。

 栄口さんは本当にいい人だ。
 帰りたくないと言う俺を、深く理由を問い詰める事もなく、とりあえずと言って、自分の家に招いてくれた。
 しかも奥さんがココアを出してくれたりしてさ。この家は栄口さんを筆頭に、奥さんも子供達もみんないい人だ。
 優しさってのは伝染したり、遺伝したりすんのかな。なら俺にはあの傲慢でサドっ気のある親父の血が流れてるわけで。
 そう考えるとゲェっとなったので、ここで思考を強制停止。

「隆司君はさ、色々苦労もあると思うけどさ、まあ、あの二人のことは、多目に見てやってよ」
 ココアを啜る俺に、栄口さんが諭すように言う。
「阿部と三橋はさ、なんとか今はああやって落ち着いてるけど、卒業後色々あって本当に辛そうだったんだ」
 そりゃ確かに色々あった。親父の前妻っていうか、俺の本当の母親が病気で死んだ時、親父は本当に荒んで、廃人のようになっていた。
 だから親父が再婚するって言った時は、俺は素直に喜んだ。
 そんで「こいつだ」って連れて来られたのが、男で、しかも親父と同級生のくせして、どう見ても俺と同じ年にしか見えない廉だった時には、度肝を抜かれた。
 さらに親父が婿養子になって、廉の家に親子二人で押しかけて行くことになった時には、なんかもう言葉がなかった。