「走れ三橋」
<これまでのあらすじ>
日没までに三星に戻らないと、人質となった叶が畠に犯される。
畠の陰謀で襲い掛かる男達に犯されながらも走り続ける三橋の前に阿部が現れて…
ttp://www40.atwiki.jp/mihashi/pages/322.html 阿部の掌は大きい。捕手の手だ、と三橋は思う。
その手が温かく三橋の肩を包み込んだ。包み込んで、何度も労わるように柔らかく撫ぜる。
三橋の肩。
投手の、肩。
阿部が一番大事に思う、投手の肩。
そこにも、無残な陵辱の跡が刻み込まれていた。
殴られた時のものだろうか、押さえ込まれた時のものだろうか、青黒く変色しつつある痣が
肩にも痛々しい痕跡を残している。
阿部の触れた指先が、かすかにべたついた感触をとらえた。汗と――白く粘る体液。
半ば乾きかけて粘る感触に、阿部は僅かにたじろいだ。
「それ」が三橋の身体にぶちまけられる光景が、嫌でも脳裏に浮かんでくる。
何人の男に犯されたのか。
何人の男の精液を飲まされ、尻の中に注ぎ込まれ、顔を、胸をどろどろに汚したのか……。
「くそっ」
阿部は一度きつく首を振ると、その妄想を追い払った。
考えるな。想像するな。思い出すな。
俺が、それにショックを受けてどうする。一番傷ついたのは、三橋なんだ。
三橋自身なんだ。