>895 桐青ターンその2 興味ない俺らはスルーなー
「慎吾さん、それ、もしかして構いすぎじゃないですか」
「はあ?」
「猫が嫌がってんのにしつこくするから、怒ったんじゃないすか。きっと」
「しつこい? オレが?」
「わざといじめて嫌がるようなこと、したんじゃないんですか。慎吾さん、結構構いたがりだから」
別に苛めたりしたような覚えはないが。それはともかく、確かに三橋はあまり人に構われる…というか、他人に慣れていない気はする。
いつまで経っても自分に馴れないし。
考え込むように黙り込んだ島崎の目を覗き込むようにして真柴が続けた。
「だから、自分がしたいことより猫が喜ぶようなことをやってあげたらいいんじゃないすか」
ニコニコしながら自分を見上げる後輩を、島崎はぽかんと口を開けて見た。そういえば、その発想はなかった気がする。
素直な後輩の頭を、ぽん、ぽんと島崎は撫でた。
「ありがとな。本当にいい子だなー迅は」
「…もうっ、そうやってすぐ子供扱いしないでください」
褒めてやったのに、ぷいと頬を膨らませて、顔を真っ赤にしたままどこかへ行ってしまった。
その後ろ姿を見届けてから校門を出ると、今度は河合に出くわした。
「何だ、お前も今帰るとこかよ」
「久し振りに迅と話してたな。何、話してた」
「別に。オレ達がいなくなった後の部のこと、結構上手いことやってるようだぜ」
「知ってる。準太も利央と何とかバッテリーらしくなってるようだし。どうなるかと思ってたが、何とかイケそうだな」
そのまま並んで歩く。それ以降特に会話も思いつかなくて、何となく沈黙が重い。
河合とは同じクラスだが、そう言えば引退してこうして一緒に並ぶことはなかった。
「お前たまには、部に顔出せよ」
沈黙を破るように河合が口を開いた。
「オレはもう」
「引退したからって、後輩は後輩だぞ。面倒みに来ちゃダメだって法はねえ」
黙る島崎の隣で、河合は淡々と話を続けた。話が終わると、また沈黙が訪れる。