>前々スレ742 桐青ターンにつき興味ない俺らはスルーよろしく
夏の陽射しは相変わらず強い。
蝉の声も変わらず強く、窓の外に見える空は突き抜けるように青かった。
グラウンドに目をやると、野球部員達がランニングをするのが見えた。
外はこんなにも晴れているのに、引退した自分は四角い教室に閉じ込められている。
補習が終わって真っ直ぐ校門に向かうと、思いもよらない人物が声をかけてきた。
「お久しぶりっス、慎吾さん」
「迅」
真柴がタッタッターーと軽い足取りで島崎の元へ駆け寄ってきた。
「これから練習か」
「ハイ、慎吾さんは? 予備校ですか」
嬉しそうに自分を見上げてくる後輩の顔がひどく懐かしくて、思わず島崎の頬が緩んだ。
つい最近まで毎日のように会っていたのに、まるで遠い昔の事のように思える。
しばらく立ち話をしたが話題はやっぱり部の事ばかりで、自分達が引退した後について真柴はあれこれと話した。
何だかんだいって、こいつらは元気だし楽しそうだ。目を輝かせて話す後輩を、目を細めて島崎は見た。
予備校の時間が迫り、その場を去ろうとしたその時、急に気付いたように真柴が口を開いた。
「慎吾さん、そのキズ、どうしたんですか?」
「ああ、コレ」
すっかり忘れていた。昨日三橋に引っ掻かれた痕だ。
「そんなに目立つか、コレ」
「うーん、目立つってほどでもないんですけど…そんなとこ、どうしたのかと思って」
「今、うち猫預かってるんだ。そいつ、臆病なクセに妙なとこで反抗的でなあ…」
傷をさすりながらそう言うと、真柴がおかしそうに笑った。